札幌地方裁判所 昭和46年(ワ)213号 判決 1971年4月14日
原告 泉壬伸
被告 北都興産株式会社
右代表者代表取締役 武田忠幸
主文
一 被告が訴外金丸次男に対する札幌簡易裁判所昭和四四年(ロ)第四一八六号事件の仮執行宣言付支払命令正本に基づき別紙目録記載の物件に対してなした強制執行による売得金について、原告が金五〇万円の限度で被告に優先して弁済を受ける権利を有することを確認する。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを二分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
四 本件について当裁判所が昭和四六年二月二二日にした強制執行停止決定を取り消す。
五 本判決確定前に第一項記載の強制執行について配当を実施する場合には、執行官は売得金のうち第一項記載の金員に充つるまでの分を原告のため供託せよ。
六 この判決の第四項および第五項は仮に執行できる。
事実
≪省略≫
理由
一 被告は原告主張の事実を明らかに争わないのでこれを自白したものとみなされる。
二 右当事者間に争いない事実によれば、原告は別紙目録記載の物件に対しその主張の債権について優先的な弁済を受けるための譲渡担保権を有するにすぎないことが明らかである。
しかして、一般に譲渡担保契約上の法律関係としては、担保権者は弁済期を経過しても被担保債務の弁済がない場合に目的物件を任意かつ適宜の方法で換価して売却代金を被担保債権の弁済に充てることができるのであるが、弁済に充当してなお剰余があればこれを物件提供者に返還しなければならず、また物件を提供した債務者は債権者による換価処分があるまでは被担保債権の弁済と引き換えに担保物件を取り戻すことができるのである。かかる内容の権利を有するにすぎない譲渡担保権者は、未だ換価処分に至らない間は第三者の債務者に対する担保物件に関する強制執行についてこれを全面的に排除するよう求めることはできず、民訴法五六五条の優先弁済を求める訴の限度でその権利を主張することが許されるにすぎないものというべきである(東京高判昭四四・一・二四高民二二巻一号三五頁。なお、大阪高判昭四四・九・一六下民二〇巻九・一〇合併号六五五頁参照。)。
三 本件の場合、前記当事者間に争いない事実によれば未だ目的物件の換価に至っていないことが明らかであるから、原告の請求は主文一項の限度でのみ正当として認容すべく、これを超える請求は失当として棄却すべきものである。
よって、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、強制執行停止決定の取消・競売売得金の供託およびこれが仮執行宣言につき同五四七条、五四八条、五六五条二項をそれぞれ適用のうえ、主文のとおり判決する。
(裁判官 稲守孝夫)
<以下省略>